何事も全力の女…愛しの手越

地元の友達から荷物が届いた。中身は冷凍のトリュフバター。なんともおしゃれなものだった。

送り主は手越、高校の同級生だ。

手越は愉快な女なので大好きだ。何事も一生懸命、全力で取り組むところが好きだ、高校の頃も常に全力だった。

手越はとにかく勉強ができなかった。テスト前は泣きながら勉強をする、徹夜だって平気でする。それなのに赤点だらけ、おそらく効率が悪いのだ。そういうところも愛しかった、なんでそんなにできないのか不思議で仕方なかった。

一度筆箱を借りたことがある。手越の筆箱はおそろしく大きく、ペンが山ほど入っていた。これは使いたいペンを探すのが大変だろうなと思った。

教科書を覗いた時もほとんど蛍光ペンでマークされていて、マークされていないところの方が少ないほどだった。これじゃあ、どこが大事かわからないだろうな…そんな手越が可愛いのだ。なぜなら手越は一生懸命、それが良いと思って取り組んでいるのだ。

高校三年間続けた部活を引退した時、手越はなぜか1人だけ顧問の先生からティファニーのネックレスを貰っていた。不適切な関係な訳はもちろんなく、ただ手越の一生懸命さが先生の心を動かしただけの結果であった。手越はお返しをしないとと、大パニックになっていた。

そんな事態を巻き起こす手越はさすがだ。

手越は友達の中では早めに結婚をした。子供ができたのだ。悪阻も重たく辛い中、強行した結婚式ではバージンロードを真っ青な顔でひきずられていた姿が忘れられない。それでも懸命に結婚式に挑んでいた。なぜなら、結婚式はしないといけないと決まっていると思っていたらしい。どこの決まりかはわからないが、手越の生きる世界では決まっていたらしいのだ。意味がわからない…なんて愛しいんだ。

そんな手越から届いたトリュフバター、わざわざイタリアだかドイツだかから空輸したらしい。

何もできない手越が食品にこだわりを持ち、わざわざ空輸して手に入れていることに私は感動した。しかしその理由が衝撃だった。野菜炒めに入れると美味しいと聞いたから、らしい。私、料理下手だからさ、とも言っていた。

それってウェイパーとかじゃだめなの?と聞いたら、ウェイパーって何?と聞いてきた。

愛しい。

ちなみにトリュフって何か知ってる?と聞いたら、チョコでしょ。と言っていた。

手越…すごいな、あなた…。

一生大事にしたい友達、手越。

会いたいな。

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